院長ブログ

睡眠相後退症候群と不登校

公開日:
監修:めいほう睡眠めまいクリニック院長 中山明峰

 15歳男の子です。朝起きられないために学校に遅刻する、時に登校できないことが続いています。
 この症状に悩むお子様を持つ保護者が沢山います。昨年度、小中不登校数が30万を越えました。トップに来る不登校理由のひとつが「生活リズムの乱れ」26%とあります。逆に、生活リズムの乱れをなくせば、救えるお子様がいます。
 今年の日本睡眠学会で報告する予定ですが、当院のデータに基づき、判明した不登校児の特徴をお知らせします。
<なぜこのような状態に陥るのか>
少子化で多くのお子様が個室を持つため、保護者は子どもの入眠時間を把握することができなくなりました。治療の第一歩は睡眠を可視化することです。当院はボタン型の医療機器で測定します。図の青い帯が睡眠時間、つまり、このお子様が4時過ぎに寝ていることを保護者が把握できず、朝起きられないことだけを病院に訴えます。
<睡眠可視化の重要性>
 現時点保険診療で睡眠を可視化することは不可能です。通常の診療では睡眠日誌をつけて頂くだけですが、お子様は無関心、保護者が記録したものを持って来ることが多く、それでは意味がありません。近年、時計型やスマホのアプリでも計測できるので、それらを使用することをお勧めします。
 図のように、この子は最初零時過ぎ、どんどん入眠時間が遅くなり、三日目には4時過ぎに寝ています。なんとか朝10時過ぎに起きて学校に遅刻しながら行きます。入眠時間がどんどん後ろにズレ寝ることを睡眠相後退症候群と言い、若い方の特徴です。この子にこのデータを見せながら生活指導をすると、零時までに眠るようになりました。15歳のお子様は最低9時間睡眠が必要で、入眠時間を9時にずらせるまで生活改善すれば、朝6時に起きられるようになります。
<なぜ病院だけで治すことはできないか>
 中学に入ると自己意識が高まり、徐々に保護者と距離を遠ざけ、このような状態が睡眠を悪化させている可能性があります。まずは会話する機会を増やし、保護者の価値観を押しつけるのみでなく、お子様の声を大切にしましょう。
保護者との関係がこじれ、大人と口を聞かない状態で来院されるケースもあり、この場合医療の力だけでは難しいです。本人から情報が聞き出せず、医師とのコミュニケーションがとれず、小児心理専門外来に紹介することがあります。睡眠を可視化することは、本人の同意を充分に得た上でないと逆効果となります。
<発達の問題>
 睡眠障害の裏に発達障害が合併している可能性があります。学生のみでなく、社会人になってから気づくこともあり、容易に診断がつかず、発見が遅れることがあります。心理に精通しない一般医は見抜けないことが多々あり、「発達障害xクリニック」で検索し、専門施設を受診することをお勧めします。
<どうしたら良い?>
 不登校になると、医療者の力だけで改善することは困難です。保護者、学校を含めたコミュニティが意見交換をしながら、保護者が本人と密接な関係を保つことがもっとも重要です。
 昭和の子どもたちは夜9時に眠りました。テレビは早くから番組が終わり、商店街は7時に閉店、夜外でうろうろする子どもがいたら隣近所の大人に怒られたものでした。
 社会環境が睡眠行動パターンを変えてしまい、大人からして睡眠負債を抱えています。今一度大人が襟を正し規則正しい睡眠をとり、子どもたちを9時に寝かせる生活に戻しませんか。


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