「アナログ時代の発達障害」2023.7.11.中日新聞メディカル・トーク
幼少期から変だと言われてきた。子どもは好奇心を持つといいと言われるのに、「なぜ空は青いの」と質問を繰り返すと「うるさい」と怒られた。私からすると大人の方がよほど変だ。
医師になってからも主要分野に目を向けず、同業が敬遠する「めまい」と「睡眠」ばかりで診療と研究を続けたら、変わり者だと言われた。報告した論文が世界で注目されると、いつしか世間の表現が「先見の明がある」と変わったが、疑問を持った疾患に執着しただけなので、褒められてもそううれしくはなかった。
二〇〇二年の文部科学省調査では、小中学生の6%が発達障害だと報告されている。その翌年に東京都であった教師による調査では、チェック項目に「他の子どもは興味を持たないようなことに興味があり、自分だけの知識世界を持っている」とある。調査されれば私も間違いなく発達障害とされたことだろう。
発達障害自体は広く知られるようになってきたが、対応できる施設は不足気味。治療が投薬中心であったり、周囲からの偏見を受けたりと、患者を取り巻く状況には問題も数多い。
私は運良く、あまり意識しないで今日まで来て、幸せな家族に囲まれ、人に必要とされる仕事に従事できている。その理由について考えると、環境に容赦なく動くデジタルがなく、人に優しいアナログ時代に恵まれたからとしか思えない。