院長ブログ

日本宇宙生物科学会:重力と睡眠

公開日:
監修:めいほう睡眠めまいクリニック院長 中山明峰

 本日宇宙生物科学会で「重力と睡眠」と題してお話をさせて頂きました。このような機会を与えて下さった片山直美会長に深く御礼を申し上げます。
<内容>
・1961年(なんと私が生まれた年)に、ロシアが最初の無重力飛行を行い、ゲルマン・チトフ飛行士は宇宙酔い起こした後に8時間半眠った。以来宇宙飛行のプランでの睡眠時間は8時間、会場で8時間眠っているひと手を上げて、・・・皆無。
・2010年、報告者がメニエール病と睡眠の追跡をした際、めまい患者は不眠かと思ったら逆に睡眠時間が延長していた。睡眠脳波は左方移動し、悪化傾向だった。
・眼球運動のアクセスセンターである脳幹網様体は自律神経の中枢でもあり、この部位の過興奮は不眠のもとになるのではないか。
・京都大学の研究で帰還後の飛行士の視神経鞘が腫脹している所見や多くの論文より、意外と飛行士は体に傷を負い、報告以外の神経症状が多々ありそうだ。
・宇宙酔いはさながら、帰還後、内側前庭神経核において速度蓄積機能で宇宙酔いを書き換えられずに異常感覚が長期に残るひともいるのではないか。
・初めての月面着陸したアムストロングは光と音、さらにsomething elseが原因でとても眠れる環境ではなかったと記録に残している。
・近年帰還後の飛行士のメンタル問題が多く報告され、75%の飛行士が睡眠薬を使用していたことがわかった。不眠は宇宙飛行士にとって深刻な問題だ。
・さらにその睡眠薬の90%がベンゾジアゼピン系の薬物であること、この薬物の依存性が
帰還後のメンタル状態に影響しないだろうか。
・前澤友作がYouTubeで睡眠までのレポートをしているが、浮いてどこが地面かわからない状態で、脚を曲げ蹴った力で背中を壁につけると安心感が出るとのこと。これぞ睡眠衛生ではないか。
・現在地上で睡眠障害と闘っている報告者、薬物に頼らない「安心感」を患者に与えることに力を入れている。科学が進むなか、アムストロングが眠れない理由のsomething elseに対する回答は、「安心感」ではなかろうか。
<会場からのご質問>
Q:耳石と宇宙酔いをどう解決するか
A:地上の実験で眠る頭位角度を変えるだけで宇宙酔いを起こすのに、自由に動く耳石器は想像できないほどの苦痛だと思う。将来の飛行船が例えば回転しながら引力発生をさせる装置があればかなり症状改善につながると思う。
Q:前庭器と筋肉の問題
A:宇宙では筋力低下が大きな問題である。現在前庭電気刺激装置が既にできているので、シックパッドのような電気刺激装置による前庭器刺激から筋肉トレーニングを行うこともできるのではないか。


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