院長ブログ

PPPDシリーズ・その2:まさかの若手精神科医の出現・・・

公開日:
監修:めいほう睡眠めまいクリニック院長 中山明峰

主旨:PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)とは、2018年WHO国際疾病分類ICD-11に登録されたばかりの比較的新しい疾患であり、まだ治療法が確立されていません。これまで関わってきた経験を記すことにより、本邦におけるPPPD研究の発展に繋げ、一刻も早く悩む患者のために治療法が見いだされることを祈ります。


(つづき・・・)
 目の前に現れた若手精神科医・近藤真前は、物腰が柔らかく、優しいまなざしを持っていたが、気持ち貧弱にも見えました。まさかこの人物が後日本のPPPD研究の第一線を背負う人間になるとは当時思いもよりませんでした。自己紹介で大阪出身だが、縁もゆかりもない名古屋に来た話を聞いて愕然としました。
 もともと彼は学生時代から精神科に興味があり、科学的であり先端的である認知行動療法を学びたいと思っていたようでした。研修医として大阪の救急外来に勤務した時、多数のめまい患者が救急外来を受診し、その多くにメンタル素因があることに気づいたそうです。ショックでした。数十年先輩の私が世間に伝えたくて頑張ったことが伝わらず、無垢な彼が自主的にこのことに気づくとは。
 精神科で認知行動療法、耳鼻科でめまい、そのような環境が整っている大学を探したところ、名古屋市立大学しかなかった、さらに私が書いた「集団精神療法」の論文(写真)を読まれたそうで、それに感銘したと言ってくれた時、涙出そうなくらい嬉しかった記憶が残っています。白い巨塔のことですから、色々とあったことはご想像に任せます。愛知医科大学から名古屋市立大学に移った時、過去を一切払拭して新たな人生を歩もうと思い、どうせ誰も興味を持たなかった「集団精神療法」の研究を封じ込めようとした直後でした。そこに存在したのは、新た発想が湧き、メンタルを睡眠にすり替えたずるい自分がいました。
 「先生は日本のめまい治療に精神療法が必要と訴えた初めてのひとです」と、近藤に言われた時、彼にこう返しました。「好きでやって来た訳ではない、こういうことを理解する耳鼻科医がいなければ、精神科医もいなかったからだ」、と返しました。大好きなヴァン・ゴッホ、亡くなるまで絵が一枚ほどしか売れなかったことに比べればどうってことはない、しかもこの仕事を一緒にしたいという精神科医が現れた、過去に書いたこの駄作がまさか大きな展開を迎えるとは、想像もできませんでした。
 近藤から原因不明の「慢性めまい」について、世界研究が激しく動いていることを聞かされ大変驚き、二人でそれに追いつこうと密かに計画を企てました。原因不明のめまいについてそれぞれの施設が別々に呼び名をつけ、個々の治療をするのではなく、多施設で同じ方向に向き、同じテーマを研究しないと世界に追いつけない、二人の強い共通した思いがありました。
 さあ、ここは中山の出番だ、権限には屈しないが、なぜか友だちが多い。日本中で研究に協力してくれる仲間に声かけをすると脳裏で過ぎりながら、一抹の不安がありました。友人とは言え、それぞれの研究者は研究成果が財産となる、財産争いのようなことにならないかと心配でした。このようなみっともないことが起こらないように、前もってあるルールを考えました。
 データを集め、解析し、投稿までは近藤であり、彼が論文の第一筆者になる、次に多施設から提供された症例データの多い順に、筆者の順番が決まる、最後に来るのは近藤の施設長である教授が来て、中山の順番はそれらに挟まれたところでいい、とルール決めをしました。
 毎年夏にめまい専門医が集まる日本めまい平衡医学会の夏期セミナーに近藤を連れて参加し、勉強会中に友人たちに耳打ちし、待ち合わせのカフェを書いたメモを渡しました。何人残ってくれるか、ハラハラドキドキ、長年夏期セミナー開催委員を務めていたのに、勉強会中心は上の空でした。
 勉強会が終わると同時に近藤と急ぎ足でカフェに向かい、幸い空いていて、20名ほどの席をとったものの、果たしてなん名現れてくれるのか、もし誰も来ずに近藤と二人だけで終わったら、どうやってお店のひとに詫びるか、待つ数分間が何時間にも感じました・・・。
(つづく・・・)


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