成功大学と煮肉飯 ―その１／３：台湾歴史と味覚は台南にありー
近年日本で起きている「煮肉飯」ブーム、なぜここまで流行っているのか謎であり、また、多々誤解がることを見受けます。台湾の歴史と味覚について、３回シリーズでお話致します。
「ルーローハン」という言葉がチャーハンに追いつく勢いで知られるようになり、輸入品を扱うカルディのみならず、和製・無印良品でも定番レトルートとして販売されるようになりました。嬉しい反面、どんどん本筋の煮肉飯から逸脱する場面を見受けるのが心配です。正しい煮肉飯に対する認識についてのお話、是非お付き合い下さい。
台湾と言えば首都は台北だと思われる方が多いでしょう。1662年、台湾からオランダ人を追い出し、福建省から来た鄭成功（図右下）が台湾を統一し、首都を置いたのは台南（図右上）であります。鄭成功は長崎平戸市出身の母親を持つハーフで、今では建国の父として敬われるのみならず、神さまの存在として多くの寺で祭られ、台南に大きな成功廟があります。
台北が東京に相当するなら、台南は京都です。味覚は福建から渡り、サトウキビが多く採れたところから甘めの台南料理と変化し、皆さまが知っている台北の料理は、台南料理と蒋介石が連れ来た各地の兵士家族からミックスされた独特の中華料理です。
日本に来て京都に行かない外人はいないので、次の旅は是非新幹線で台北から約２時間の台南まで足を伸ばして下さい。新幹線は行く前から予約QRコードで簡単に乗車、日本同様自販機もカウンターもあります。
日本が関東と関西が大きく分かれ、外人からみると不思議な兄弟喧嘩をする文化は、台湾にもあります。「南部人」という言葉を、台湾の南部の人間はやたらと使いますが、台北のひとは「北部人」とは言いません。思えば日本でも「関西人」は関西を自慢するが、あまり東京のひとが自分のことを「関東人」とは言いません。もしかして北部が勝ち組だからかも知れませんが、私が幼少期台湾の最南端屏東市にいた頃からあった現象で、会話を聞いていると南部人は未だ拘っている気がします。
台北に移った親戚の従姉妹と会うと、北京語に染まった現地・閩南語がおかしく聞こえました。大阪人は、東京に移った友人に「なんちゃって、という言葉を使うお前はもう東京に染まったな」と、東西お互いに譲らない部分は、台湾はでも南北で同じです。思えば米国中部にあるイリノイ州に住んでいた頃、NYとLAの人々が仲良しではないことに驚いたことがあって、世界共通の文化かも知れません。SNS時代にもう偏差はないだろうと思っていたら、何も変わってないことに逆にホッとしました、笑。
蛇足ですう。幼少期、台湾に入った蒋介石軍は台湾人に現地語を禁じ、全国学校で閩南語を喋ると罰金を取られたことがありました。このことは今でも還暦前後の台湾人と話すと、若者が信じないほどびっくりし、中高年はこの「あるある話」で盛り上がります。われわれ子どもは学校で北京語を学びましたが、両親まではなんとか、祖父母になると通訳しないと北京語は全く通じません。
もう時効になったので、カミングアウトします。私は屏東駅媽祖廟前で、当時開業していた唯一の耳鼻科医家に生まれ、今から思えば学校でもちょっといい扱い方を受けた気がします。なぜか先生から、私が閩南語を喋った学生から徴収された罰金を集める当番に命じられ、家から持ち込んだ空の薬瓶に入れて保管させられました。そのおかげで、私は一度足りとも罰金を取られたことはありませんでした。ちなみにその薬瓶は最後先生に渡したまま、行方どうなったかわかりません。
今でも講演にて屏東市の耳鼻科医家で生まれたと話すと、君の父親に診察して貰ったという聴衆が現れます。ちなみに睡眠研究仲間で、所沢で呼吸器科クリニックご開業の林俊成・院長は、父親の治療を受けたことがあるどころか、一緒に屏東旅行した際、彼の小学校担任と私の担任が夫妻であったことが判明し、大びっくりしました。世の中狭い。
鄭成功の名前からちなみ1931年に創設された成功大学は、北の台湾大学・南の台南大学であるように、日本では京都大学に相当する学校です（図左上）。台南駅降りると目の前の敷地すべてが成功大学と言っても過言ではないほど巨大な敷地を持ち、訪問客も多いため、敷地内にホテル（成大校友会館）を所有していることは、その２でお話します。工業が強い大学で、今の台湾ITや経済を支えている多くの有名人は成功大学出身です。
成功大学は台湾人なら誰も憧れ、私がそのまま台湾で育っていたら、間違いなく合格できない学校であります。そんな人間が今では講義に行かせて貰えるようになり、行く度に涙が出るほど嬉しいです。成功大学睡眠中心（センター）は、私が命がけで応援したい組織であり、教授は弟、スタッフは皆娘に思えて、私にとって大切な第二の家族です（図左下）。
