院長ブログ

成功大学と煮肉飯 ―その2/3:―本物の煮肉飯を食すー

公開日:
監修:めいほう睡眠めまいクリニック院長 中山明峰

 日本にある煮肉飯は本場と少し距離がある印象です。東京に何軒か近い店がありますが、都心から離れれば離れるほど本物を探すのは難しいです。本物に近づくには、本国人数か、台湾旅行経験者数が一定いないと難しい気がします。正直名古屋でもなかなか。
お断り申しあげますが、本物ではないといけない、という気持ちではありません。アメリカで和食を作っているのは9割日本人じゃないのに、アメリカ人は和食を覚え、本物が食べたくて日本に来ているのですから。まずは日本に馴染む味にアレンジされた方がいたから、本日のブームがあり、感謝申し上げます。煮肉飯ブームはそろそろピークに達している可能性があり、定着して頂くためにいくつか誤解を解き、本物に興味を持って頂けたら幸いです。

誤解1<煮肉飯のみ食べることなかれ>
日本では店で天丼や親子丼と同じく、煮肉飯を丼として食べますが、間違いです。定食などのように、おかずがあって、それに添えられた汁のかかったご飯が煮肉飯です。台湾の店で「煮肉飯」だけ注文するのは、定食屋さんに入って、ご飯だけ下さいと言っているようなものです。日本にはカツ丼屋さんはありますが、台湾には煮肉飯屋さんはありません。煮肉飯おいてある店は必ず自慢の料理があるので、それらを注文して最後に煮肉飯を加えて下さい。煮肉飯は通常お茶碗程度の大きさ、たいした肉の量は乗っていないので満腹になりません(図左上)。

誤解2<五香粉を避けることなかれ>
煮卵は日本のラーメン店が考えたものではなく、煮肉飯から影響を受けたものだと思います。そもそも煮肉飯よりも「肉燥飯」が元祖でポピュラであり、「肉燥」とは挽肉をタレで煮込んだものです。煮肉は三枚肉に包丁を入れ、小さい角煮を作るため、肉燥よりは手間がかかり、より高級ですが、基本は肉燥(バーソー)です。
 日本でおでん鍋があるように、煮汁を捨てずにどんどん具を足しては延々と食べ続けるように、肉燥鍋があります。正直肉燥は出汁を取るためのクズ肉のようなものです。どの家庭にも台所の端においてあり、保存が効く非常食です。タレは醤油と砂糖、なければならないのが五香粉、私個人的に好きな南部の味は、八角が強く香る配分をされた五香、さらに揚げた赤タマネギが入ったものです。
 日本の煮肉飯は日本人に合わせるためか、五香粉がかなり控え目。日本で煮肉飯注文して一口目に五香の香りが薄いと、突如食欲が低下します。五香粉は今では日本のスーパーどこでも売られ、叉焼には必ず入っているスパイスです。インドのカレー、ベトナムのナンプラと同様、台湾料理の原点です。
肉燥と一緒に煮込まれるのが、玉子や豆腐の厚揚げであります。ほかに何を入れてもいいのです。よくあるのは鶏の腿を入れ、弁当の上にそれを載せることもあります。そうです、肉燥は脇役なのです。
 カップラーメンがなかった時代、食べ物がなければ肉燥鍋からそれらをすくってご飯にかけて食べ、正直ブーム起きるほど大げさな料理ではありません。なぜかその後、煮卵は流行しましたが、台湾では近年厚揚げをみかけなくなりました。

誤解3<台湾料理に辛さなかれ>
 名古屋に強烈な辛い「台湾ラーメン」という食べ物があり、密かに全国展開しています。ラーメンが真っ赤な唐辛子で染まり、食べれば汗が滝のように流れます。「台湾料理って辛いね」と台湾で言ったら笑われるので、是非この文章をご参考下さい。
 台湾料理の原点は福建省、海岸沿いであり食材に恵まれているため、中華料理でもかなり薄味で強いスパイスを使いません。「台湾ラーメン」を発明した味仙本店は、コリアンタウンに位置し、コリアンのリクエストに応えてできた「名古屋・台湾ラーメン」です。それが日本で広まってしまいましたが、本当の台湾ラーメンは台南発祥、さっぱりした「担仔麺」、もしくは「肉燥麺」と呼び、麺の代わりに米粉を入れることもあります(図右)。
「担仔麺」はただの素ラーメンに肉燥をかけただけのもので、食べ物がなかった時代になんでも肉燥をかけて食べたところから始まっています。肉燥をご飯にかけた「ねこまんま」が煮肉飯の原型となります(図左上)。たまたま玉子が煮込まれていたら一段上の肉燥飯や煮肉飯となります。
昔、台南にあるおじいちゃんが屋台を担いで売り歩いたのが有名となり、今ではその子孫が「渡小月」と名付け、全国展開する名店となりました。台南に「渡小月」の本店があり(図左中)、入口に昔を再現した屋台で担仔麺を作っています(図左下)。屋台を担ぐ、というところから名前が担仔麺や担仔飯となり、ここから煮肉飯に発展します。


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