二番煎じ
突如鹿児島で20年以上開業している隆雄から睡眠を勉強したいと訪れた。今更どうしたか。
隆雄は大学後輩で、医局に入ってきた時嬉しかったな。堅苦しい空気より常にふざけたい私と一緒にいつも宴会係で、二人でギター漫談をした記憶がある。その後、私が開拓した米国の留学も引き継いでくれ、それがいつの間にか、今でも大学の姉妹校として現役学生たちが留学している。
彼はやたらと細かいことを記憶していて、驚かされた。彼のひと言に思考が止まった。
「先生が作ったものをほしがる人たちがいて、それを取り上げるとあたかも自分のもののように・・・」
「そうだな」苦い笑いしながら、心から次の言葉が自然と出て来た。
「でもそれがあって、今の私がいる。結果は社会に貢献しているから、その方がかっこいいじゃん、笑笑。」
作る方がよほど楽しい。二番煎じがほしい人たちにはどうぞ、どうぞ。二番煎じを貰ってくれるからまた新しいものが作られる。開院してからもとんでもない発見をして、それを実臨床に生かしていることを見学した彼は、隠しネタに驚いてくれた。あまり目立つことをやると、仕来りを重んじる世界では嫌われるから、いつものように海外で初公開しよう。
コロナ後にもっとも閉院したのは耳鼻科クリニックである。隆雄はやっとなぜ私が睡眠をやる意義を理解してくれたよう。鹿児島の地で睡眠が広がれば県民が救われる。この再会は新しい始まりであるかも知れない。彼は二番煎じを奪う人間ではない。二番煎じは所詮それ以上の味は出ない。どんな味にでも広がる可能性を持つ新茶を広める仲間である。