院長ブログ

国際便緊急欠航!

公開日:
監修:めいほう睡眠めまいクリニック院長 中山明峰

 米国にいた頃、国内機乗り換えると3回に1回は遅延、キャンセルや荷物ロストなどで泣かされました。そのトラウマで近年米国から足が遠ざかっています。国際便と異なり国内線は何があっても、泣き寝入りです。かなりの数乗っていますが、国際線の欠航を経験したことはありません。
 中部セントレア空港から16:30のキャセイで2泊3日、旧正月に親戚挨拶で台北に行き、3日目正午の便で戻る予定でした。搭乗口前に日本人はほとんどおらず、帰省する台湾人で賑やかでした。飛行機に乗る直前、30分遅延するとの放送。30分後、機材の問題でさらに30分遅延と。ちょっと嫌な予感。しばらくして、修理いつ完了するかわからないため、軽食を配ると。これはマジにやばい。出発予定から2時間半経過したところ、欠航と悲しい放送。
 さて、この間のことです。見知らぬ人たちが、共通の不安を抱くためか、仲良く会話を始めました。私は祖父が頭を抑え、母親が注射器で1歳のお子ちゃまに薬を飲ませるシーンが可愛くて、思わず許可を取って写メをさせて頂きました。そこから話が展開してどこから来た、どこに行った、家遊びに来て、などの会話が空気を和ませてくれました。仕方ないものは仕方ない、無理に飛んで何かあっても困ると皆が共通観念も持っていたかと思います。
 ところが少し離れた場所で、通るスタッフを捕まえては不安をぶつける中年女性がいました。言葉わかるだけに聞える内容が残念でなりません。「どれだけのスケジュール抱えているのかわかるのか!飯はどうするのか!」などと機関銃のようにスタッフに向けて訴えるが、不満はあなただけではないよねと、全員が思ったことでしょう。この人はきっと慢性の不眠症に悩むタイプだろうなと、思いました。愚痴は生産性がなく、ブーメランになって「不眠」として戻るから皆さまも気をつけてね、笑。
 ちなみにこういう不眠の患者が来ると、二回目の診察で眠れる日が1割改善したとしても、「1割しか改善できないじゃないか」と必ず言います。「何年も悩んできた症状が1回では治らない、次回また1割良くなればいいじゃないか」となだめるが、そこからますますヒートアップする患者もいます。私にスイッチが入ると、丁寧にお詫びします。「大変申し訳ありません、1回の診察で1割ほどしか改善できないダメな医師が診察を担当する資格がありませんので・・・」とやんわりと。このような思考を持った方は9割改善しても、「まだ9割じゃないか」と苦情を言い続けます。自分完璧主義だからと自慢しますが、完璧主義を人に向けた段階でダメな主義でしょう。可哀想に人は静かに離れて行きます。
 さて、私も17名の職員を抱える管理者です。この修羅場をスタッフがどうクリアするか、人間ウォッチングすることにしました。大勢が緑のユニフォームの中、一人だけ黒服の女性がいました。スマホを2、3台持ち、複数の会話を同時にこなし、スタッフからの質問にも答え、そしてイラつくこともなく冷静な彼女は、チームをまとめる主任だと推測しました。
 もし明日飛行機が飛んでも、私たちは台北に12時間ほどしか滞在できない、ならば今回往復ともにキャンセルするのは可能か、この難しい質問に答えられるのは主任しかいないでしょう。彼女に近寄り、タイミングを狙って電話が終わった瞬間、「あの・・」と声掛けして、「今無理です」と言われたが引こうと思ったのですが、笑顔で対応してくれ、こうするといいというアドバイスをくれました。
 さて、近年の電子化の問題発覚。渡されたのはQRコード、切符購入からキャンセルまで一貫して電子化。そしてパソコンから切符購入した私は、スマホにその情報はなく、データを残したパソコンを置いてきた後悔と、トラブル発生時の電子化の脆さを学びました。彼女に「本当はQRコードだけではなく、かけたら人が出る電話があるのではないですか」と聞くと、その質問にも嫌がらずにスマホで電話番号を調べてくれました。
 国際便は止まるとホテルを準備してくれる噂を聞いたことありますが、実際どうやってホテルに誘導するのか、緊急状態も社会勉強として楽しもうと心に決め、結果、この旅をキャンセルせずに自然体に任せることとしました。
 欠航が決まった後の流れは以下です。一度は日本を出国したので、搭乗口から入り、入国する場所に案内されて、再度税関を通って、日本に入国する手続きをし、帰国時と同じ場所の荷物置き場で荷物を取り出します。
免税品を買った人は飛行機会社が全部の品物を預かリます。そのまま免税品を持って入国すると脱税になるからです。荷物を取ると、スタッフ全員が搭乗口からゲート外に移り、出迎えの場所でホテルの案内をしてくれました。夕食については、領収書を後に電子で申請して返して貰うとのこと。朝食はホテルについており、翌日再度飛行機チェックインすると、お昼ご飯のクーポンが出て、ポジティブに考えればこれもまた楽しい旅行ではないかと、変に納得しました。
 早朝便でもないのに、まさかセントレア空港に泊まるなんて不思議な気持ち。翌日夕方までの便、やることないので朝から運動がてらセントレア空港を散歩しました。するとトラブルのキャセイ便が遠くで停留しているのが見えました(写真)。空港を満遍なく歩いたら、普段気づかないことも沢山ありました。空港に飛行機の展覧があるのですね。
 さて、再び16:30に登機、桃園空港で従姉妹と再会、20:30にホテルチェックイン、ホテルは前日の分までチャージされましたが、これもまた領収書をキャセイに送れば後に返却されるとのこと。21:30に台北で晩御飯、11:30に24時間スーパーで土産買って寝ました。睡眠時間が勿体なくて翌朝6時に起床、朝靄の101ビルをぼっと見ていると、これまでの人生が走馬灯のように頭を巡り、台湾もよくここまで発達したものです。8:00にホテルを出発。
空港に着く前、台湾の屋台朝食をリクエストしました。ところが旧正月の朝に店が見つからず、やっと一軒豆乳と葱油餅の店が見つかりました(写真)。台湾の屋台になぜ観光客がハマるかというと、一軒一軒頑張っている店主の姿から元気を得ることができるからだと思います。夫妻はなんと深夜1時からこの時間まで、大晦日もなく廉価な葱油餅を一枚一枚焼いている姿を見たら、何故か不安も不満が湧くはずもなく、人生幸せだなと思いました。弾丸ツアーでありましたが、中身が濃縮された時間でした。
飛行機無事につき、セントレア空港のターンテーブルで荷物を待っていたところ、「中山さん!」と声掛けられました。顔をあげると、あの時のキャセイ黒服の春日井さんだ!
なぜ春日井さんと名前を知っているかというと、欠航が決まってから客は再入国に動き出し、スタッフ全員のほっとした表情が見えました。その時彼女に近寄り、「素敵なチームプレイでした、私も管理者をしているものですが、このリスクマネージをこなしたあなたに感銘しました、良かったらお名前だけでも教えて下さい」と聞きました。こういう素晴らしいスタッフがいることをキャセイに知らせようと思いました。現れた彼女は、欠航日の晩ご飯費用を、会社に申請しなくてもいいように、なんと現金を持って我々を探し、渡してくれたのでした。感動の上に感激です。
 私は中華系です。中華系は地方によって異なる文化を持ち、キャセイ本拠地の香港は古い広東省人にイギリス文化、さらに最近加わった本土。言葉のイントネーションから色々な場所からの出身がいると推測する中、中華系の短所でもある「激しく感情をむき出しにする」スタッフは誰一人おらず、彼らを教育し、一団のチームとして動き、客のパニックを抑えながらも笑顔をなくさなかったリーダーは、多言葉に堪能な日本女性であり、静が動を制する春日井さんの姿を見ることができただけでもこの旅の価値があったように感じました。トイザらスやヨギボー、海外本社が倒産したのに、日本の営業だけがうまく行っているため、日本社だけを残しています。それどころかヨギボーについては、日本社が本社を買い取った経緯があります。
 日本人って、すごいな。苦情も言わずに、給料あげなくても、見えないところでも働き、声を荒げることもしません。私が飛行機会社を持っているならば、この春日井さんに倍払っても引き抜きたいな。綺麗事をいう人間はいくらでもいますが、本物の管理者であるかどうかは、リスクマネージをいかにこなせるかの一点に尽きます。
最後に春日井さんに、こんなことって年に何回起きるの?と聞くと、1度あるかないかとのこと。これだけ毎日飛ぶ飛行機便が年に一度しかない出来事に出会って「人間万事塞翁が馬」、気持ちよく寝て火曜日から元気よく働いています。
ところであのおばさま、今頃も誰を相手にぷんぷん怒っているのかな。不眠で私のクリニックに来ても、「言葉わかりません」で誤魔化そうかな・・・。


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