最近の医療講演会はコンプライアンス
最近ニュースでタレントや政治家がひとつの発言ミスで人生が終わってしまうコンプライアンス問題が多発。ファジーで生きて来た昭和の人間からすると、恐怖です。
大学で睡眠医療センター長を務めた時代、適齢期(今はアウトワード!)の女性医療者が頻繁に研究や診療に参加したいと申し出を頂きました。学ぶのに年数がかかる、婚期を逃して欲しくない、チームに参加するまでこのことは考えてほしいと伝えました(今はアウトワード!)。
この背中押しにより、3組のカップル(このワード死語)が誕生し、全員の結婚式に参加した際感無量でした。また、子宝に恵まれ、今も素敵な家庭を築いているのを見ると、幸福感に浸ることができます。さあ、この行為は、今ではアウトです。セクハラであり、パワハラであり、犯罪であります。恐ろしいことに、10年前の出来事ですが、今裁判にひっぱり出されたら処刑されるのです。
近年の講演会、聞く方も喋る方も悲しくなるくらいコンプライアンスに羽交締めされます。講演する前にスライドが検閲されます。スポンサーにとって利益のない講演をすることは、逆にコンプライアンスに触れるというおかしい現象が生じます。そのためスポンサーに利益が生じなければ、大切な学問だとしても講演会で聞くことができなくなりました。講演の最初にスライドで、利益相反表明をしないといけません。会社によっては抜き打ち講演収録をし、検閲したスライドと異なる内容を話した場合、警告を受けることがあります。
この現象にコロナが加わり、医師たちは集まることができなくなりました。電子上で情報を得るようになり、医師連携が希薄化、さらに飛び交う情報が真実かどうかもわからず、経済的効果は外資系企業に吸い込まれ、国益にとっていいとは思えません。
この中でも、口減らずの危ないスピーカーでも呼んで下さる講演会があり、澱んだ水から口を出して新鮮な空気を吸った鯉の気持ちになります。懲りずに小生の話を聞いて下さる素敵な仲間に恵まれて、地域の医師たちをまとめられる緒方ファミリークリニック・緒方正樹院長に年に一度、今回で3回目の講演会を開いて頂きました。
それだけに公然では話せないネタを準備し、コンプライアンスに触れない程度沢山隠語を使い、先生がたに明日からでも診療に役立てる自分の失敗談を盛り込みました。終わった後の懇親会、無論スポンサーと無関係に全員で割り勘。どんなご馳走よりも楽しくて皆から聞ける話はプライスレスです。
コンプライアンスとは「法令遵守」を意味します。コンプライアンスを武器に「何もできません」と訴える人が増えています。確かに何もしなければ法に触れることはありませんね。でも、そんなつまらぬ人生は自分には無理です。患者が幸せになれるなら、スレスレ法に触れない程度の発言はさせて頂き、医師たちと切磋琢磨したいと思います。