顎が外れる話・・・
30数年前、初めて研修した静岡掛川市の病院、人生で多大な迷惑をかけた先輩。当時から無謀な人間にいつも優しく教えてくれ、度々お宅でご馳走にもなった恩人。その後、跡継ぐため福井に戻られ、30年ぶりにご挨拶。お互い怖々救急当直した思い出話が絶えず。初めての救急患者は笑いすぎて顎外れたスナックの綺麗なお姉さん、人間って本当に顎が外れるんだと驚き、美人も台無し、折角覚えた顎戻しの技術も二度と使うことなかったな、など。食事の後半、今後の話に及ぶと、先輩は当時から深刻な問題を話合う時に見せた表情に変わり、「三ヶ月後廃院するんだ」と。
コロナでもっとも被害を受けたのは耳鼻科医。その脅威を知らなかった頃、世界で多くの耳鼻科医が患者の飛沫を浴びて亡くなった。直後、学会からスプレーやネブライザーの禁止の通達が出た。それは餅屋に餅売るな、と命令するようなものだ。全国で次々と耳鼻科が閉院した話はニュースにもなったが、残酷なことに収束する頃、すぐ近くで若い先生が開業した。ひとつの時代の終わりと感じたでしょうね。
散々ひとに迷惑かけて育った自分、これからは私が先輩たちをお世話する順番が来た。私はまだまだ、高い山に登って、常に変わる風景を伝え、先輩たちの気持ちを上げて頂きたい。