二度と会うことがない?
旅行先でふと出会ったひとって、生涯二度と会わないと思いません?
母は生前、新幹線ホームでGoひろみさんと二回ニアミスしたと言ったことが、なぜか深く記憶に残っています。Goさんは姿に印がついているから、誰しもがわかるのですが、これが一般のひとならば、下手すると二回会話しても覚えていないかも知れません。見知らぬひとと偶然二回出会うということは、日本人口1億余り分の1の確率ですよ。
二年前に家内と姫路城に行きました。歴史の疎い二人なので、ガイドさんをお願いしようと思い案内所に立ち寄ったところ、「うわ、全員出てしまい、戻って来たとしても、今日はもう終わりです」と言われました。そこにひとり、母に歳の近い女性ガイドさんが、ハーハー言いながら戻られました。私たちをみてことを察し、「私、もう一回行く」と言われました。一回のツアーで数え切れない階段を上り、3時間のツアーはせいぜい1日に2回が限界のところ、3回目行くというのです。心配しましたが、言葉に甘えました。
都会に住み階段を上らない私たちにとってかなりきつい運動となりました。しかしあまりにも興味深いガイドをして下さったため、時間があっという間に過ぎました。それにしても年号から歴史の流れから何もかも熟知し、語り方も楽しくて、さらに私たちの体力を上回るこの方の存在に感動しました。しかも、この仕事はボランティアなのです。その献身的な姿勢に、医療者として恥ずかしくなりました。深々とお礼をして、こんな天使に二度と会わないだろうな、と思いながら、姫路城には大変いい思い出を残しました。
その2年後、兵庫県揖保川病院から公開セミナーのご依頼。姫路と言えばガイドさんに会いたい、と思いました。探しに探して、連絡先がみつかりました!連絡したところ、公開セミナーにいらして頂けるとのこと。
講演始まってすぐに、この姫路城での出来事を話しました。このなかにガイドさんどこかにいますか?と問いかけたのですが、誰も手を挙げませんでした。この日百名以上の聴衆がいらしたので、自分からみつけるのは難しく、残念、と言いながら講演を始めました。
終了後、ひとり年輩の方が会場に残りました。ガイドさんでした!嬉しくて、嬉しくて。講演で呼びかけたのは恥ずかしくて手が上がらなかったとのこと。姫路城ガイドはリタイアして時間ができたからいらして頂いたそうです。名古屋から持って来た土産を渡したところ、倍の土産を渡されました。二回あることは三回ある、次回は名古屋で会いましょうと、お別れしました。
これが一期一会ですね。私は見えるものには執着しないのですが、ひととのご縁には貪欲です。姫路にご縁を持たせて頂き、感謝です。