院長ブログ

癌はアウト!

公開日:
監修:めいほう睡眠めまいクリニック院長 中山明峰

 外来終わったとたん受付に呼ばれ、こんなかっこさせられ、「還暦」祝いをして貰った。赤いシャツを頂き、集まって間もないスタッフたちだが、もう家族同然だ。短期間に完成したこの連帯感が何よりのプレゼント。そしてこの歳まで生かせて貰い、感謝以外何もない。フェースブックでも世界の医療者や友人からのメッセージ、返してはまた入る連続で、なんて幸せなやつだろう。
 結婚した30年前、米国イリノイ州に留学することになった。たまたま友人に勧められ、米国最大手の生命保険P社に加入した。映画でシカゴダウンタウンが写る度、誰しもがわかる街の顔を代表し、そびえ立つビルである。
 その生命保険も満期になり、還暦直前に保険員と面会し、今後の手続き説明を受けた。ところで昨年前立腺癌のほぼゼロ期で、全摘手術して先生にも完治だと言われたが、これで入れる保険があるか、と聞いた。ところがその保険員はしかめ面した直後、「癌はアウトです」の一言。どういうこと?「癌はうちではすべてアウトなのですよ。5年経たないと保険に入れません。」うっそだ!世界のP社、癌って部位によっても予後が全く異なる、組織型でも違う、何よりも早期に全摘すれば完治することをまさか知らない?でも取りあえず一旦退こう。
 翌日他社に打診した。今の時代、どこの会社でも癌でも入れる保険があると言われ、見せられた資料は、まさに癌の進行度、組織型、などの違いで加入条件が異なるものだった。人生半分付き合ったP社、再度保険員に、他社大丈夫だというが、貴社はすべての癌はだめか、と聞いた。やはり、うちでは「癌はアウト」ですね、の一言。
 ところで皆さんは「アウト」、という言葉をどう受け取る?その後米国に4年いたが、ひとに「アウト」という言葉を使ったら、「死ね」という意味となるから絶対使うなよ、と言われたことがある。そう言えばその保険員、自分はホームページを飾るエリート社員と聞かされた。20年以上付き合ってきたが、彼の一言を今でも私は信じない。私が医学を憧れ、ノーベル賞が最も多い国、その国の保険会社が癌によっては治ることを知らない。何よりも、「癌」に一度でもかかった人間を「アウト」と表現する会社って、一種の差別にさえ感じた。
 長寿により、ひとは「癌」とともに生きることができるようになった。私の前立腺癌はまだ手術するほどではないと主治医に言われながら、不安を捨て、新たなる人生を歩みたい覚悟で手術を受けた。何よりも名市大泌尿器科は全国でもトップクラスの技術を持っていることは前職の時から知っており、主治医たちによって命が救われた。その恩返しに今度は私が生かされた命で社会貢献をする番である。
 今から生命保険に入る人たちへ。「癌はアウト!」を考える会社に加入したら大変だから、よく調べられることを勧める。何しろ彼らの持つ医学知識は30年前のものであり、その頃平気で行われた差別を未だに続けている可能性がある。還暦なんて高齢の一年生、癌なんて風邪みたいなもんさ。医者が言っているから間違いない。


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