院長ブログ

わたしたちすべては、眠り続けるのではない

公開日:
監修:めいほう睡眠めまいクリニック院長 中山明峰

 心に悪魔が潜む私は罪滅ぼしのため、広路教会の日曜学校で時々子どもたち相手に話をする。先週睡眠専門クリニックを名古屋駅前に開院できたことに感謝するとともに、「眠り」のテーマで話した。
・産業革命後人は楽な生活ができた反面、不眠が増え、100年前睡眠薬に「バルビツール」という麻酔薬を用いた。ところがこの薬物は筋弛緩作用が強く、大量服用により多くの人たちが命を落とした。そのため、60年前から多飲しても生命を落とさない「ベンゾジアゼピン」の開発がされ、その後精神安定剤と呼ばれ、本日でも大量に投与されている。
・ところが2007年にショッキングな論文が出て、これらの薬物は麻薬類似薬と報告され、マリファナよりも有害性や依存性が高いと知られた。薬物依存がなく、睡眠動態に準じた睡眠薬が出たのはつい最近(2010年)であった。
・2010年頃からもう過去の薬を使うべきではないと力説したが、講演中に年輩の医師にそんな副作用を見たことはない、だまれ、とさえ言われたことがあった。2015年ある方に出会って、ショッキングな事実を知った。その方は薬物の副作用を知るよしもなく、医療者にどんどん「ベンゾジアゼピン」を投与され、日常生活ができないまで副作用が出て人生を棒に振った。その方が病院を相手に訴訟を起こし、その裁判にも関わった。医療訴訟で患者側が勝つのは奇跡だと言われている現実の中、彼は勝訴した。このことは新聞でも掲載されたが、2018年法改正され、処方警告が促されるまで医療者は睡眠を診断することもなく、安易に薬物投与を続けた。
・今から考えると、そもそも「睡眠」の定義も知らずに、意識を無くすことをいい睡眠と勘違いした時代があった。例えば高齢者の睡眠時間は短くなり、6時間でも足りることを知ることができたら、9時に寝て深夜3時に起きてもそれで睡眠は充分、朝に起きたいなら夜遅くまで起きる工夫をする、などを医療者が患者に指導していたら、薬物を使用する必要もなかったかも知れない。
・コリント人への第一の手紙15章には「眠り」という言葉が沢山出て来て、睡眠専門家でも意味が深すぎてよく理解できない。しかし、「薬物だけで」眠りをよくしようと思うことは明らかに間違っていると子どもたちに伝えたい。
 と子どもたちに話した後、次の牧師の礼拝を待って座っていたら、ある高齢の女性信者が声をかけて来た。「NHKの放送みたよ、睡眠の話勉強になった、でもね、私は○○○○(ベンゾジアゼピンの1種)しか効かないけどね」と言われた。そうですか、それは良かった、と応えた。え?止めないの?という表情。道ばたで美味しそうにタバコ吸っているひとにわざわざタバコをやめなさいとは言わないよ、ばかな私でも。私は○○○○しか効かないのよ、と話を完結しているのに、私は何もいうことはないわさ。
 クリニックに来る患者にこのような方が結構いる。ベンゾジアゼピンやめたいけど、どうしたらいいか、という方には力一杯お手伝いをする。しかし意外とベンゾジアゼピンしか効かないのよ、専門医のあなたから処方して、と来られる方もいる。不思議だ、その薬を近所で出して貰うより、専門医に出して貰うとより効くと思っているよう。私からは出さない、地元で出し続けて貰えれば宜しいのでは?というと、このおっさん患者のいうことを聞かないし、商売っ気ないなと不思議な顔で帰られる。
 お願いがあります。ベンゾジアゼピン続けたい場合、あまり私のクリニックで粘らないで下さい。私もひとの子、時々口角が下がることもあります。ごめんなさい。


関連記事

この記事のハッシュタグに関連する記事が見つかりませんでした。

最新記事

カテゴリー

アーカイブ

ハッシュタグ

お電話でのお問い合せはこちら
(診療時間 10:00〜13:00 16:00〜19:00)

電話番号:052-571-7781(予約専用)