院長ブログ

落語を一席:生きているからこそ繋がる奇跡

公開日:
監修:めいほう睡眠めまいクリニック院長 中山明峰

2006年、当時の桂三枝師匠が上方落語の灯を守ろうと、大阪天満宮のすぐ横に「天満天神繁昌亭」を開席しました。あれから通い続けて久しいですが、東日本大震災のとき、館内の提灯がひどく揺れたことは今も忘れられません。
繁昌亭に通ううちに露の新治師匠と知り合い、落語の間の取り方や話の構成が、自分の講演にも活きていると感じています。通い道にある天満橋筋商店街、全長2.6キロ、かつて日本一の長さを誇ったアーケードをぶらぶら歩くのも楽しみのひとつです。端まで歩ければ大阪駅まであと少し。そのまま歩くか、JR天満駅から電車に乗るか、その日の気分で決めます。
ある日、大阪駅に向かってふらりと歩いていると、昭和の薫りが漂う大きなビルの前で足が止まりました。高級中華料理レストランとサウナが一体となった、堂々とした構えのビルです。「これだけの施設を建てたのは、きっと華僑の方に違いない。どこのご出身だろう、今は何代目だろう」——そんなことを想像しながら、その前を何度も通りました。
後になって知ったのですが、そのビルは大阪では知らない人がいない「大東洋グループ」のもの。高級中華料理、結婚式場、サウナ、カプセルホテルを擁する一大施設で、キタで飲みすぎて終電を逃したサラリーマンの駆け込み寺としても知られているそうです。
さて、話は大きく変わります。
先月の連休に、叔父が他界してから20年以上ご無沙汰していた叔母と、アメリカのアトランタで再会しました。懐かしい時間を過ごし、いよいよ帰国という最後の日、叔母がふと思い出したように一枚のメモを手渡してくれました。そこには二人の名前が書かれていました。
「実はね、あなたの叔父と出会う前に、一か月ほど日本に行って日本文化を学んだことがあるの。そのとき遠い親戚の家に居候させてもらって。それきり会っていないけれど、日本に私の遠い縁者が住んでいるから」
とはいえ、日本にいる華僑の方は何万人もいます。このメモを渡されても……と思いながらも、「困ったときに頼りなさい」という叔母の親心だったのでしょう。
帰国してからしばらく経って、ふと叔母の言葉を思い出しました。「洪さんはレストランとサウナを経営している」、そう言っていた。まさかとは思いながら、友人の大阪で小松貿易株式会社を経営する周社長にその名前を尋ねてみました。
返ってきた答えに、思わず絶句しました。
「それ、大東洋グループの創業者と、先代の社長やで。知り合いやよ」
あの前をずっと通りながら想像していたビルの、まさかの縁者だったのです。
後日、周社長のご縁で洪前社長にお引き合わせいただき、大東洋レストランのVIPルームで心のこもったお料理をご馳走になりました。60年前にお父様が建てられたというそのビルで、大阪で生きてきた華僑の方々の歴史を、たっぷりと聞かせていただきました。三代にわたって大阪に根を張ってきた背景には、先代の厳しくも愛情深い経営哲学があったと知り、深く胸を打たれました。
人と人は、どこでどう繋がっているかわかりません。大東洋グループと自分が、こんな細い糸で結ばれていたとは——まるで落語のような話です。
今日、あなたのすぐそばをすれ違った人が、いつかあなたの人生に深く関わる人かもしれない。出会う一人ひとりを、大切にして生きていきたいものです。


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