院長ブログ

初めて医者になれた年

公開日:
監修:めいほう睡眠めまいクリニック院長 中山明峰

 悩んだ末3年前に大学を退職した年、人生で初めてフルセットの人間ドッグをした。前立腺癌が見つかり、初めて「医者の不養生」という言葉の意味を知った。勤めた名古屋市立大学、泌尿器科の素晴らしい主治医チームに恵まれ、まだ経過をみてもいい初期段階と説明を受けた。還暦を前にして人生心機一転の年にしたいと相談し、全摘術を行ったのが3年前の年初めであった。
 ダヴィンチによる手術、終わって目が覚めた途端に涙が出た。「生かされている!」実感。少し前の術後診察で全く再発や後遺症の傾向がなく、そろそろ診察は間を空けてもいいと言われ、感謝。
 手術直後に感動したのは、これだけ大きな手術を行ったのに痛みもなく、なんていい時代に生まれ、妙手に恵まれたことか。同僚が沢山見舞いに来てくれたが、人間ドッグしたことある?と聞くと、誰しもがそんな暇ある訳ないと答えた。職場の簡単な検診で異常なしと思うな、「たまにはフル検査して」と懇願しても、誰も聞く様子がない。そりゃそうだ、退職を決めていなければ、私もそうだった。腹に何個も手術跡があるが、年々薄れる。この傷はいつまでも消えずに自分を戒めたいと願う。
 迷いがすべて消えた。後悔だらけの人生をやり直す最後の機会と認識できたからこそ、名古屋駅で大学レベル同様の専門診療、全国で苦しむ患者が気軽に受診できるクリニックの運営、このハードルの高さに恐怖感はなかった。
死に怯え、日々不眠に悩む年輩者に苦しみをシェアできる気持ちで診察すると、医療に対する受け入れの良さに驚いた。子どもたちの昼夜逆転問題、途方に暮れた保護者に連れられ夕方や土曜日に数多く訪れる。午前しか外来しない、傾聴する時間もない多忙な大学病院では、まともに診療できなかったことを自嘲した。患者の痛みがわかるようになり診療が変わった。わずか1年で予約が飽和し、質を落とさないようにするために、今年は急がれる方には当院をご遠慮頂くよう伝えたい。
 人生後半に大病して良かった。やっとひとの痛みがわかり、この年になり初めて医者になれた。


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