睡眠薬のビジネストーク・その3:苦境に立たされるクービビック®
ブログに載せる文章は友人を限定したFacebookにも転送し、そちらでコメントを頂いております。本件について医療界、企業、何よりも患者に迷惑をかける事案であるだけ、睡眠専門医・睡眠指導医としても情報を明らかにするべきだと思い、謎と解明を公表しています。Facebookで北九州にて精神科医であり、睡眠専門医であられる著名な有吉祐先生とのコメントのやりとりを公表します。最後までお読み頂くと、この件については結末に近い印象があり、今後新たなる情報がない限り、その3で一度話題を締めることとなるかと思います。
2025.12.18.
有吉祐先生:
「精神科医で睡眠専門医の北九州の有吉です。親愛なる中山先生のFBなので、一言書き込まずにいられませんでした。お許しください。
精神科医への選択的なプロモーションや販売戦略にシフトしたという情報は、おそらく間違いであると思います。私は各社のマーケティング部の方とも頻繁に情報交換をしていますが、むしろ逆ではないかと思います。今後、クービビックは内科系(いわゆるプライマリー・ケア)への情報提供を強化すると聞いています。クービビックは、副作用の少なさ、いい意味でとんがっていないところ(効果面)、用量の単純さなど、プライマリー・ケアの先生方が多く接する「長時間睡眠を望んでいる高齢者」にこそ適した薬剤ではないかと思います。
もし、シオノギが精神科医への活動を重視していくとすれば、それは新たな抗うつ薬を販売する予定ということが考えられます。そもそもシオノギは内科系の医薬品を販売してきた会社ですから、精神科医を相手にするのは苦手なはずで、それを強化するために精神科医に向けた…と言ったのではないでしょうか。
確かに、過去のやらかし故に講演会に対してはPTSDになっていて、査読を受けていないデータ等は講演会で提示することが出来ないほどスライドチェックが厳しく、また一部の教授達しか講演してこなかったことは事実ですね。ただ、スライドチェックの厳しさは業界全体に広がっていることで、以前は中山先生もM社に憤慨しておられましたよね。
精神科医にも精神科医以外の医療者に対しても、情報提供が不十分であることはご指摘の通りだと思います。
だからこそ、中山先生がご指摘されたように、我々睡眠専門医が公正な情報を幅広く提供して行かなければと改めて思いました。」
2025.12.18.
中山:
「先生の貴重なご意見ありがとうございます。正直3ヶ月ほどMR全くご無沙汰で、一年経ったのも気づかず、先生がた東京で一年目の集いに行かれた日に友人の精神科医に来ないの?と聞かれて初めて気づきました。さらに12月三週間過ぎてから担当が来られ、聞いたところ本社からの方針と伺い、集いに精神科医以外いなかった事実を知りました。
いずれ今回のことは何が本当か、恐らく多くの人たちが狐に摘まれた感じに思います。先生のコメントは貴重で、重ねる話合いにより真実が少しずつ見えて来るように感じます。感謝申し上げます。
今回の件について、なるほどと頷く貴重な情報であると同時に、逆に色々と疑問が湧き、個人メッセンジャーにもメッセージが寄せられています。精神科以外の一般医には情報が欠けているので、先生のコメント含めて追加の情報提供お願いできますか?
1. 今回のプロモーションについて、精神科医以外の睡眠専門医、少なくとも私を含めた中部の専門医には情報提供が欠け、圏外におかれた意思疎通が起きています。先生のコメントは貴重で、塩野義製薬は抗うつ薬と抱き合わせる戦略が判明し、なるほどと思いました。一方、もし先生が逆の立場で、ある向精神薬を先に一般医に情報提供し、1年以上経ってから精神科医にアナウンスする状況を体験したら、先生は積極的にこの薬物を使用しようという気持ちになりますか?感情的なことが発生している事態を会社が軽視しているように感じますが、逆に皆を代弁している人間として、どのようにこのパニックを諫めたらいいと思いますか。
2. 尖りのない薬物という情報は、なんとなく得ていました。ところが<その1>で木村先生のご意見にあるように、今世間ではレンボレキサントに満足している状態で、尖るならば2.5mgに落とせばなんら問題がない、それでも本剤がそれを上回るようなメリットがあるから第一選択にしよう、という理由はなんでしょうか。
3. 先生のメッセージでスライドチェックの話と今回の話とどのような関連性を持つのか、教えて下さい。
4.今入った情報から、先生は塩野義製薬の治療研究をなさっておられたそうですね。勉学のためにそのデータの共有は可能でしょうか。先生は色んなマーケティングのコンサルもなさっておられるのでフェアな情報提供ができると伺いましたが、これまでのほかのオレキシン拮抗薬の会社とも治療研究をなさって来られたのでしょうか。利益相反のことも伺えたら幸いです。」
2025.12.19.
有吉先生:
「中山明峰先生 ご質問に対し、私なりに真摯にお答えさせていただきます。ただ、あくまでも私見ですのでその点はご了承ください。
1.まず、誤解を解いておかねばなりません。私が述べたのは、シオノギが抗うつ薬を来年以降発売予定であるという精神科医として知り得た事実についてであり、抱き合わせる戦略だと申し上げたわけではごさいません。
情報のアナウンスについては、精神科医重視とかいうわけではないと思います。元々、ダリドレキサントは持田製薬が販売する予定が、持田が薬価が決まった途端降りてしまい、シオノギが単独で販売することになりました。しかし、そのシオノギは例の事件で最初から自社の製品プロモートに足枷がついた状態だったのだと思います。その結果、九州であれば内村先生と高江洲先生しか講演していない状況が続き、今も精神科医といえども情報提供が少ない状況だと思います。
精神科医にだけ情報提供して、それ以外の医師には情報提供しないという意図はメーカーには無いと思いますよ。そんなことしても,なんの得もないことは誰でもわかるはずです。
2.どなたがクービビックを第一選択にしようとおっしゃっているのでしょうか?私はオレキシン受容体拮抗薬は棲み分けが進めば良いと思っています。どれが一番良いとかいう議論は避ける時代ですし、それぞれの良さがあると思っています。オレキシン受容体拮抗薬が第一選択になる時代はエーザイのおかげでほぼ到達出来ましたよね。この4剤の中であれば、どれを第一選択とするかは主治医の選択だと思います。
3.スライドチェックの話は、なぜ情報提供が進まないかという点に繋がります。私もクービビックの良さやその他のオレキシン受容体拮抗薬の使い分けを多くの先生方に伝えてあげたいですが、なにぶんスライドチェックが厳しくて、言いたいことが十分言えない状況です。なのでどうしてもスピーカーは偉い教授達ばかりになり、それが先生の言われている精神科医ばかりのプロモーションにつながっているのかなぁ?と愚行した次第です。
4.シオノギの多施設共同研究は先日終了いたしました。今後論文にしますので、もう少しお待ちください。睡眠学会でも発表する予定です。エーザイとの臨床研究はすでに終わっていて小曽根先生が代表で論文を書かれています。このほか、各治験に参加しておりますし、アドバイザリー契約なども交わしています。特に一つの会社に肩入れするようなことはございません。流石にスボレキサントがMSDから第一三共になってからは付き合いが減りましたが、ボルノレキサントは発売前から沢山講演をやってます。
SNSは怖いですね。私の不用意な一言が誤解を生んで一人歩きするのは困ります。あくまでも、私が書いたことをそのままお使いいただくということであれば、私は明峰先生を信じてますので、添付していただいても構いません。
私は中山明峰先生のような方こそシオノギや第一三共の力になれる思っています。デエビゴやボルズィは今後放っておいても売れる薬です。でもベルソムラやクービビックにもそれぞれの良さがあります。適材適所にそれら全てを上手に使って最終的に患者を治してあげることが我々の課題だと思っています。」
2025.12.20.
中山:
「有吉先生
私たちはそれぞれ大人ですので、この場の会話が場合によって企業に影響を与える可能性があることを理解し、常識な範囲内での会話と感じます。一方、新薬に関して期待が高まる中で誤解を招く事態が起きているのも事実です。現在、多くの企業がプロモーション予算に苦しむ中、臨床医は情報提供に頼らざるを得ず、情報の届く順番は企業の戦略に頼らざるを得ません。
中部地区には全国の睡眠専門医の約1割が存在するため、睡眠に関する情報の重要な拠点です。しかし、睡眠専門医に情報が届かなかったことが最大の障害となり、誤解を生み、問題を引き起こしたことが先生の均衡の取れたコメントから明らかになり、大変感謝しております。
SNSの影響は確かに大きいですが、時には政治をも変える力を持っています。それゆえ、睡眠領域の先頭に立つ人々が非難を受ける可能性があっても、誤解を招かないような正確な情報提供が必要だと思います。
利益相反を明確にすることが求められる昨今、私自身は現在すべてのオレキシン拮抗薬販売会社と利益相反はありません。ただし、制限されたFBページであっても、多くの医療関係者が読んでいるため、個人的なメッセージが多く寄せられています。そのため、先生に利益相反についてお伺いしたのもご理解いただければ幸いです。これに基づき、フェアな情報提供が重要だと考えています。
全体像がほぼ見えてきました。もし先生のご意見がなかったら、偏った見解になっていたかもしれません。薬物の効果については1年以上経過した今、手応えが感じられませんが、問題は薬物そのものではなく、医薬情報担当者(MR)の活動やそれを指示する企業側にあることがわかりました。企業としては、社命をかけて守らなければならない1年をこのように粗末にされたことは非常に残念です。これからどのように挽回されるか、期待しています。
FBはセミクローズドですが、先生のご許可をいただいたことを踏まえ、ブログにも掲載させていただきたいと思います。
まずはお礼まで。」
