院長ブログ

睡眠薬のビジネストーク・その2:なぜクービビック®が精神科に絞った販売ルートを始めたか

公開日:
監修:めいほう睡眠めまいクリニック院長 中山明峰

過去には、不眠に対する精神安定剤・ベンゾジアゼピンの使用により依存の問題が発生し、認知機能への影響などと多く副作用が報告されてきました。その結果、最近ではオレキシン拮抗薬に注目が集まり、5年ぶりに塩野義製薬から発売されたクービビック®に関して話題が集中しています。その1でお話させて頂いた内容を千名以上の医療者フォロワーがいるSNSで議論したところ、多くの関心が寄せられ、新たな情報が得られ、その一部を紹介します。
精神疾患に精通し、一般医に対して睡眠薬の正しい使い方を広めている木村勝智先生からのコメントが寄せられました:
「自分は不眠と睡眠薬に関しては、講演や著作などでそれなりの貢献をしているつもりですが、クービビック®に関しては、(1年以上経過するが)今に至るまで全くアプローチがありません。」
「精神科でもすでにレンボレキサントが標準薬となっていると思われますので、どれほど食い込めるか疑問です。本来であれば、最初1年は専門医中心に、1周年を過ぎたら大々的にプロモーションというのが常識だと思うのですが、何を考えているのかよくわかりません。」
さらに、宮崎県延岡市の精神科病院に勤務する清水謙介先生からも意見を頂きました。「私には業者からもメールがあり、病院では説明会もあり、薬剤もあり、ふんだんに情報はありますので、どうぞご連絡ください。精神科より睡眠専門医を優先すべきと、私は個人的に思います。精神科学会の推奨どおりに使用する精神科医が、田舎では少数です。」

これらのコメントから、精神科以外の医療者に対する情報提供が不十分である可能性が高いことがうかがえます。今後、新薬に関する情報は清水先生を通じて得られることになるでしょうが、この薬の優位性については慎重な評価が必要です。また、精神科医は全医師の約5%に過ぎないため、塩野義製薬がこのようなマーケティング戦略を取った背景には、何らかの事情があるのかもしれません。

塩野義製薬が公表している2025年度第2四半期のデータからすると、今年度のクービビック®の売り上げ目標は96億円でしたが、8月に下方修正(26億円)し、実際4~9月の売り上げは4億円しかないことを見受けると、下方修正してもその半分にも届かない可能性があります。2025年3月に公表された違法行為も大きく損失を与えたことでしょう。目標の10%ほどしか結果が出せないとなると、会社にとっても深刻の問題となりうることでしょう。
憶測に過ぎませんが、売上が目標に達しなかった場合プロモーション予算を大幅に削減し、全医師の5%しかいない精神科医に依存する方針を取る可能性もあるかもしれません。精神疾患の多くは不眠に起因することがある一方で、適切な不眠治療を行うことで精神疾患の悪化を防ぐことが重要です。一年経過しても精神科医以外の一般医、例えば内科医が精神科を行っている診療所にさえ情報が届いていない状態を勘案し、医薬連携が取れない限り新薬を処方する訳にはいきません。この情報は一般医のなかで拡散して頂けたら幸いです。

塩野義製薬の販売戦略が、過去の課題を繰り返さないことを願っています。


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