最も気が重い講演
今年は数十回の講演をいただいた中で、最も気持ちが重くなる講演が年内最後にありました。この講演は3ヶ月前からご依頼をいただき、日々内容を考え、最後の1時間まで悩みながらスライドを作成していました。
名古屋市立大学皮膚科の森田明理教授から大学院生への講演依頼を受けた時、私は耳を疑いました。大学を退職してすでに5年が経過し、先端の研究についていけるわけもなく、ましてや日本医療の未来を背負う若手医師たちに何を話せるのか、ずっと自問自答していました。しかも、森田教授からは好きなテーマで話していいとのことでした。他に現役の研究者が多くいる中で、私に対してどのような期待を持たれているのかも疑問でした。加えて、私は常に独自の人生の歩み方をしてきたため、時に大学からは危険人物視されがちです。
医師免許を取得した時点で十分高学歴であるにも関わらず、なぜさらに大学院が必要なのか、実は当時1年間悩み続けました。その中で気づいたことの一つは、大学までは与えられた知識を暗記するだけであるのに対し、大学院では誰もが気づいていないことを発見する必要があるということです。つまり、大学院は一段階上の思考回路を開拓する場所であると気づいたとき、自分が他人と異なることは必ずしも悪いことではなく、逆にひとと異なる考えが誰かの役に立つ発見はこのような心理状態から生まれるのだと気づきました。
近年、卒業後すぐに美容分野に進む若手医師が増えていることは社会問題となっています。これについて、従来の体制の大学教員も考えるべきことがあるのではないでしょうか。今回の総裁選において、オールドメディアの情報は不透明で、ニューメディアに対する国民の信頼が高まり、新しいタイプの総裁が誕生したことに、オールドメディアの声は若者たちには届かないということです。
確かに美容業界では大学院生の2倍の金銭を得ることができます。しかし、本当に金銭目的で2倍の幸福が得られると思いますか?最初から金銭を目的に職業を選ぶのであれば、医師よりも金銭が尺度の職業は多々あります。そうであれば、むしろ全く異なる職種に転職する方が良いのかもしれません。
今日、森田教授からこのような機会をいただいたのは、大学離れても過去にないスタイルの医療を行っている私が、若者たちに何かのメッセージを伝えられるのではないかと考えました。還暦以降にますます人生が楽しくなり、欲しいものを手にできるのは過去の研究人生のおかげだと感じています。人生のプラトーをどこに設定して幸せになるか、「急がば回れ」を最後に送りたいと思います。
講演後、森田教授と大学院生2人で美味しい中華料理をご馳走になりました。思い返してみると、10年前に臨床実習で教えた学生でした。彼らはこの中華料理屋さんによく来るようで、入店すると店員からすぐに「ご飯大盛りね」と言われた様子に笑ってしまいました。家帰ったらネットで「さとうのご飯」を頼んで送ろうとおこうと思います。
大学教育はオールドとニューの転換期にあります。未来に向かっている教室は領域が異なっても、応援したいと思います。森田教室のますますのご繁栄をお祈りします。オンラインで参加して下さった先生方、ありがとうございました。びっくりしたことに参加された○科の主任教授、危険な講義を聴かれて偉いかたに気づかれて立場悪くなりませんか、笑。
