第16回日本耳鼻咽喉科心身医学研究会:睡眠から見える心
2023年10月18日に東京にて、「第16回日本耳鼻咽喉科心身医学研究会」が開催されます。通常の研究会は年に一度行われるもので、一般的に講演の機会をいただくのは一生に一度しかない貴重なものです。それにもかかわらず、今回は第1回以来、実に15年ぶりにお呼び頂き、感無量です。
この会は非常に専門性の高い先生がたが多く参加されるため、私も緊張しています。15年間の自分の成長を振り返りつつ、辞世の句のつもりで、精いっぱいのメッセージを残したいと考えています。清水謙祐会長と五島史行代表世話人に心より感謝申し上げます。
耳鼻咽喉科に直接関係のない先生も多く参加され、大変勉強になる会です。多くの身体表現性障害は頭頸部に関係しているためです。ぜひ、QRコードからご登録ください。
話の要約を添えます。
<睡眠から見える心>
第1回の記念すべき会に、五島史行代表世話人が講演の機会をくださってから、あっという間に15年が経った。まさか再び清水謙祐理事に招待いただけるとは思わなかった。1998年、めまい患者に対する精神集団療法(ER 1998)を報告した年、耳後から聞こえる囁きは「いよいよあいつおかしくなった」と感じた。一方、二人の後進が疾走してきて「賛同する」と言ってくれた。この会とのご縁を持つきっかけとなった理事の二人である。雲外蒼天の如く、いつの間にか耳鼻咽喉科の世界に知らない者はいなくなり、この領域は二人に任せた。一方、私は睡眠医療に取り組み始めると、睡眠の世界から見ためまいと心身疾患は、また異なるものとして見えた。その後、ある医療訴訟に巻き込まれ、これまで耳鼻咽喉科で推奨していた心身症状に対する投薬に問題があったことに気づき、初回の講演ではそのコメントを残した。
睡眠に関わるようになってから、若者たちの起立性調整障害がこれまでとは異なる疾患に見えてきた。また、心身と無関係と思われていた良性発作性頭位めまい症(BPPV)が、持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)を誘発することを2017年の研究(ER)で報告した頃から、睡眠の観点から検討を進めた。BPPVは睡眠中の寝返りの際に多発し、メニエール病やPPPDの患者は共通して不眠を訴えいる。では、なぜ睡眠解明なしでこれらの領域を解明できるのだろうか。
時代はアナログからデジタルへと変化した。15年前はガラケーを使っていたが、今やスマホなしでは生活できない。若者たちは時間の効率性を重視し、一方、心身医学の診療は果たして時代に追いついているのだろうか。不登校や若者の離職といった社会問題が深刻化する中、医療者はこれらの難題に無関心でいられるのかと疑問に思う。大学を退職してからは、さらに深く社会の先端的な心身問題について考えるようになった。さらに15年後、自分が土の上にいるかどうかも定かではないが、その時も、この会が継続していることを願う。そして、この抄録をお読みになる皆さまの目に留まる内容でありたい、そのような気持ちをもって講演をさせていただく。
