院長ブログ

仮想空間の医療

公開日:
監修:めいほう睡眠めまいクリニック院長 中山明峰

 今では電子パネルをみてボタンを押せば、なんでも家にものが届きます。医療もそうなりつつあります。来春から国家政策でさらに電子化が進み、いよいよ処方箋なしでクリニックから調剤薬局に電子処方箋で飛ばすようになり、オンラインで医師がどこにいるかもわからない状態で診療を受け、薬局に行けば薬が貰えます。
 不眠で受診された若者が既にオンラインで睡眠薬を貰い、その後診療所に通い睡眠薬を続け、それでも治らず受診。
「なぜオンラインやめて診療所に行ったの?」
「オンライン料がかかり、直接診療所行った方が安いと気づき変えた。でも治らない。」
そりゃそうだ、プロが使うスパイスを手に入れたら一流レストランと同じ味になるだろうかと、心で呟きました。残念ながら、仮想空間はまだ現実の中に存在するし、アナログを抜いた仮想空間に幸福はないと私は思います。
 医療施設は必ずどこかの薬品卸会社と契約しています。院内で使いたい薬が必要な時は卸会社に連絡し、製薬会社に連絡が行き、薬品が届きます。私のところは古くからある大手の会社。ここと契約したのは、この会社は創業者の意志で公的研究基金を立ち上げ、利益を医学研究に還元し、私は大学時代の研究、さらに開院時もサポートして頂いたことに対する感謝の気持ちです。
 200人雇用する大きな医療施設を持つ仲良しの先生のところにあるデジタル型の新しい卸会社が訪問し、戦略情報を仕入れに行ったのでしょう。すると、中山に相談するといいと勧めて下さり、会社から数名担当が来院しました。
 初回面談するも、向かう目的か全く読めない社員たちで話が一向に進みません。大きく戦略的なお話(B to B)と想像したが、どうも違います。営業の話ならば、貴社に切り替えるメリットは何か、B to Bのこと含めて2点宿題を持ち帰って頂きました。
 次の面会で担当ひとりが来られ、なぜか遠慮もなく私のパソコンの横に座りました。ひとのパソコン画面をお断りもなく視ることに強い違和感。次々と個人情報を入力させられ、最終画面が写真の通り。
 会社の新しい戦略として、医師自分がパソコン操作し、薬品関係会社の展示場に行き、興味あるブースの受付と挨拶、各々の展示場の中に入れば情報が得られると理解するまで、1時間かかりました。
 一度パソコンを閉じ、私が喋る番です。
「前回出した二つの宿題に対する回答は?」
「・・・・・」
「結局は私の1時間を使い、自分の売り込みだけをして、宿題は放棄?」
「・・・・・」
それからお詫びの言葉はすべて耳に入らなくなり、お引き取り頂きました。
 なるほど仮想空間、タイパ(時間節約)、コスパ(経費節約)を考えれば最高のシステムで、息子たちなら大喜びのシステムでしょう。ただ、彼らのタイパは自分の都合だけを考え、ひとの心、アナログを大事にする年寄りは完全無視で、侮辱された気分でした。本邦の医療電子カルテ化はまだ半数の中、還暦過ぎたものとしてはデジタルを受けて入れている方です。今経済握っている年寄りたちを無視し、いつか全て仮想空間に入れ替わった瞬間、「自分の仕事も消える」ということを知っているのでしょうか。ひとの頭と心で考えればすぐに出る解答だと思いますけどね・・・
 年寄りの医療者たち:仮想空間医療を売り込みに来た時すぐにお断りした方が、お互いが求める最高のタイパ・時間節約になると思います!


関連記事

医療保険診療のリモート化

保健所査察:サイバーセキュリティ

台風一過

恩師との日帰りツアー

各務原市・講演「認知症にならない眠り方」

第38回睡眠呼吸障害研究会耳鼻咽喉科部会 <睡眠と起立性調整障害>

最新記事

カテゴリー

アーカイブ

ハッシュタグ

お電話でのお問い合せはこちら
(診療時間 10:00〜13:00 16:00〜19:00)

電話番号:052-571-7781(予約専用)