「心ってどこにある?」第86回日本心身医学会中部地方部会・学術講習会
1985年に耳鼻科入局直後、「めまい」診療に没頭しました。基本的に耳鼻科は外科医、延々と話をする患者に耳を傾けたがる医師は珍しいよう。早速教科書文献を読みあさるも、どう考えても他覚所見と患者の訴えが一致せず、なんらかの見えない因子が隠れているのではないかと疑っていました。米国で影響を受けた集団精神療法を1998年めまい治療に導入し発表すると、「おかしくなった」と噂されていると、親切にも教えてくれた友人がいました。不思議と「おかしい」と言われることに、なんら抵抗を感じない自分、確かに「おかしい」よね、と自笑しました。その頃、真剣に心身医学を議論するグループがあることを知り、教えを請い、心について学ばせて頂きました。
それから約20年後、心因的素因が混在する新しいタイプのめまいがあるとWHOがICDで承認し、PPPD(持続性知覚性姿勢誘発めまい)の病名をつけた。この仕事は細々と続けたが、共鳴する後進が増え、日本から国際雑誌に投稿した初めての論文となりました。
第一線の研究から外れた現在、経験が臨床で生かされ、日々症状に苦しむ多くの患者が遠方から訪れます。ひとりでも救える喜びに浸り、逆に救えないひとに苦悩することも多々あります。微かでもひとの心が見えると、日常生活に疲れることもあります。例え小さい組織でも、心のないことに気づかない権力者の姿が見えると、悲しくてなりません。
その最中、目を疑う講演依頼がありました。 日本心身医学会からの教育講演?!ちょっと待って、門下生の私がベテランを相手に心を説いていいの?しかも雲の上の重鎮の特別講演が控えているのに?
これまでも多くの専門外からの講演依頼がありました。過去に一度たりとも断ったことがありません。講演って、相手に上から教えるのではなく、下から失敗談を話せば、聴衆の耳を汚さずに済むかと思うからです。
再びハードルの高いご依頼ですが、会長の山口力先生の恥にならないよう、御礼を申し上げるとともに、是非大勢お越し頂けたらと思います。専門外の医療者だからこそ参加するべき会だと思います。
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