起立性調整障害のお話
歯科雑誌「歯科衛生士3月号」からの依頼原稿を掲載します。歯科医師の補助をする衛生士が読まれる雑誌で、この執筆依頼した編集者から、歯科診療台から起き上がる時にふらっとめまいを起こす子どもさんが多いことを聞き、驚きました。
歯科の診察台でめまいを起こす大人場合は「良性発作性頭位めまい症」というめまい疾患が多いのですが、子どもさんの場合は以前「起立性低血圧」、今では「起立性調整障害」と呼ばれる症状が多くみられます。昔から学校の朝礼で倒れる生徒、立ち上がると急激に血圧が下がって脳から血の気が引いて意識を失う子どもさんはこの疾患の可能性がありますが、自律神経の乱れが関与します。
今では一般の方でも知られるようになった疾患ですが、睡眠専門家からすると、睡眠が強く関係しているにも拘わらず、広く知られていないことに懸念を感じます。日本の子どもたちは世界でもっとも睡眠時間が短いワースト3に入ります。睡眠不足が続くと、足りない時間は負債となり、今では「睡眠負債」は脳や肉体まで蝕むと言われています。自律神経を整えるのは大変なことでありますが、もっとも容易にやる方法はたっぷり眠って一日をリセットし、これを毎日継続することだと思っています。大概このような話を患者家族にすると、習い事や塾が大変で睡眠時間が取れませんよ、と言われます。困った社会問題です。