院長ブログ

<台湾人にとっての居酒屋>

公開日:
監修:めいほう睡眠めまいクリニック院長 中山明峰

睡眠医療という領域はすべての診療科が関わるため、各国でこの分野をリードする先駆者は、それぞれ異なる科の出身であることが珍しくありません。台湾トップの台湾大学で初代睡眠医療センター長を務めたProfessor Peilin Leeが、名古屋まで遊びに来てくれました。
耳鼻科医が手術を中心に睡眠医療に関わるのに対し、Peilinは呼吸器内科の立場から、睡眠時無呼吸症候群における呼吸器機能やCPAP治療について世界的に著名な存在です。正直なところ、医学的な議論では到底太刀打ちできないほどの博識ぶりで、脳みそが単純な私がうっかり接するとボロが出るので、これまでそっと距離を置いていました(笑)。それがなんと、筑波大学での研究のついでに、わざわざ立ち寄ってくれたのです。
都合により一泊しかできないとのこと。大切な夕食をどうするか——懐石料理か、生ものが好きなら寿司か、と考えていたら、返ってきた答えが「居酒屋」。
これには思わず笑ってしまいました。私も台湾に帰るたびに「何が食べたい?」と聞かれると、いつも「美味しい屋台」と答えます。ところが大切なお客様だからと気を遣ってくれるのか、屋台に連れて行ってもらえたためしがない。せいぜい庶民的なレストランか、あるいは気を遣いすぎたのかイタリアンや和食でもてなされることもあって、ありがたいのだけれど、内心少し笑えてきます。海外の料理は台湾では格上のイメージがあるのでしょうが、お互い、知っているローカルなご飯が一番食べたいものではないでしょうか。
とはいえ「台湾大学の教授を居酒屋に?!」という戸惑いも一瞬ありました。ところが面白いことに、台湾人にとって「居酒屋」という言葉は何とも不思議な響きを持つようです。中国語では文字にそれぞれ意味があり、「居」は「引きこもる・居つく」を意味するため、「屋敷に酒を持って引きこもる場所」という、なんとも奥ゆかしいニュアンスになる。そのせいか台北では「居酒屋」スタイルのお店が増えており、吉野家も半分「居酒屋」業態になっていると聞いたことがあります。
よし、期待に応えよう——と居酒屋へ。よほどお腹が空いていたのか、鶏皮の串焼きに始まり、鉄板焼きそばに大感激の様子(笑)。その後、少し散歩をして腹ごなしをしてから、外観だけでは入りにくいような粉もの屋さんを提案しました。初体験のもんじゃ焼きにも、かなり喜んでくれたようです。
Peilinは故父の後輩でもあります。台湾大学は東京大学と姉妹校で、あの赤レンガの正門が今も残されています。私にとって台湾大学は近寄りがたい遠い存在であり、父親がなぜあれほどストイックに自分を追い込めるのか、孤独ではないのかと、子どもながらに想像したものでした。
そんな遠い存在のPeilinが、東京からわざわざ1日だけ会いに来てくれて、何をすれば喜んでもらえるか不安でしたが、どうやら彼女の胃袋を掴むことには成功したようです。世界の睡眠医療のために奮闘している、素敵な仲間のひとりです。


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