院長ブログ

めまい(前庭)リハビリ

公開日:
監修:めいほう睡眠めまいクリニック院長 中山明峰

 開院して4週目に突入した。思ったほか睡眠よりもめまい患者が沢山受診して下さった。大学辞める10数年前のこと。ある理学療法士グループが現れ、「めまいリハビリ」を日本で広めないかと相談された。はっ?今更?
 私が米国に留学した26年前の2005年、既に「めまいリハビリ」の教科書作成に携わっていた。日本でも古くから「めまいリハビリ」を推奨する先生がおられたが、日本の医療制度上、医師が直接リハビリを行っていた。今でも保険診療では適応とされない「めまいリハビリ」、多忙な医師が行っては診療としてなりたたない。米国は医師が指示を出し、理学療法士が「めまいリハビリ」を行っていた。
 現れた理学療法士のグループは、このままでは日本の理学療法士はだめになると気づいた。彼らの熱気に打たれ、チームを組み、活動を始めた。学会で発表を繰り返し、日本で初の「めまいリハビリ」の教科書を作成、全国の理学療法士を集めて勉強会を行い、2018年第77回日本めまい平衡医学会総会で最高の学会賞を受賞した。受賞した夜の宴会でどんちゃん騒ぎ、全員が浮かれている最中に、私が場を白けさせる不機嫌な発言をした。
 われわれは確かに「めまいリハビリ」の火付け役となった。しかし、その後多くの施設がさらなる努力をしている姿がみえ、それぞれの成果が出始めていた頃であった。このことに彼らは気づかず、来年以降でも同じくトップの座にいられると勘違いしていた。そして、私がそろそろ大学を去らなければならない、という思いを持ち始めた頃でもあった。
 全員がほろ酔い気分で来年はどんなパーティをしようかと浮かれている最中に、とうとう爆発した。「黙れ!受賞ってどういうことだ、受賞した次の年全国からどのようなことを期待されるのか、わかっているか。明日もし私の身に何かあったらお前らだけで続けられるのか!」と大声を出してしまった。若い時に意味なく怒鳴っていた教授のことを思い出し、その場シーンとした自分に多少恥ずかしい思いはあったが、今でもこの行為を後悔していない。彼らの目は反発的であった。
 このチームに私が抜け、形だけが残った。開院直前、次リーダーと二人で酒を交わしながら話し合った。私が開院しても裏から支えると話したが、彼にはほかの妙案もあるようにも感じた。チームの活動を維持するのに、誰かが絶えまず複雑な人間関係や社会的情勢のバランスを保たなければならないことを、虚勢を張っていたメンバーは思いにも寄らなかったであろう。何よりもこの医療は保険診療下では無償でやらないといけない。いい医療と知って貰えても、医療者の間で流行る訳がないため、誰も近寄らない。現在チームはほぼ解体し、機能していない。
 自分で開院して「めまいリハビリ」を自由診療でやろう。名古屋駅前でやれば多少でも価値がわかる患者が全国から集まるだろうと恐れながら計画し、初日は4人の予約枠を準備した。あっという間にその予約枠は埋まった。以前のチームからこの活動に賛同してくれた理学療法士がひとり参加し、昨日初の「めまいリハビリ」を行った。開始前患者全員の顔がこわばっていたが、帰りには表情がほぐれ、久しぶりに体が動けるようになったと感動し、笑顔で帰られた。「めまいリハビリ」は個人で運営できる実感を得た。
 管理者になってから初めて学んだ経営の難しさ。もし真似したい医療施設があったら、運営のノウハウを惜しまずに教える。費用を頂いても決して大きな利益につながる訳ではないことを知るであろう。利益がゼロでも、患者の笑顔が大きな報酬となる。
 私はこれまでチームとともに「めまいリハビリ」というモチを絵に描いて来た。その本物のモチが患者に届かなければ、患者の空腹は満たされない。


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