『脳がないのにクラゲも眠る』(粂和彦 著)
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監修:めいほう睡眠めまいクリニック院長 中山明峰
監修:めいほう睡眠めまいクリニック院長 中山明峰
本日、朝日選書刊『脳がないのにクラゲも眠る』(粂和彦 著)を拝受しました。頁を開くと視線が止まらず、面白くてぜひ皆さまに紹介したくなりました。
本書は「睡眠とは何か」を進化論的視点から問い直す刺激的な一冊です。脳を持たないクラゲやヒドラといった意外な生物にも睡眠に相当する現象が認められることから、睡眠を高等動物の脳機能修復だけで説明するのは不十分であることが示されています。分子生物学、行動観察、神経生理学の最新知見を縦横に結びつけ、睡眠の定義や測定法、レム・ノンレムの多様性、概日リズムとの関係、さらにオレキシン発見がもたらした臨床的展開までを平易に整理している点が特に秀逸です。
私自身、大学時代に薬学部の粂教授から睡眠医学の基礎を多く学び、それが現在の臨床に直結しています。拙著も数冊ありますが、それはまるで子どもの絵本、本著はむしろ孔子の『論語』のような重みがあります。粂教授のライフワークが凝縮されており、ユーモアも交えつつ後世に残る一冊と感じました。
日常の「眠り」が多様な生物史の中でどのように形成され、各生物に特異的な役割を担ってきたのかを知りたくなる、広くおすすめできる一冊です。
