院長ブログ

デジタルで失ったアナログ

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監修:めいほう睡眠めまいクリニック院長 中山明峰

 70歳代の男性、いつも物静でとても穏やかな患者です。ある日、パンを差し出して下さり、皆さまでどうぞと言って下さいました。お礼を申し上げた後、これは?と聞くと、私が作ったのですと答えられた。え?!すごい、形からしてお店のパンのようですが、どうしてこんなことができるのですか、と素直な疑問を投げたところ、初めてこの方はあの名古屋駅ビルにある高級ホテルのパン作り責任者であったと知りました。あのホテルで結婚式や会合の出席経験があり、あの時食べたパンと目の前のパンを脳裏でシンクロさせてみましたが一致しません。今は静かに隠居生活、要請があればアジア諸国や地域のパン屋さんにパンの作り方を教えに出かけているとのこと。能ある鷹は爪を隠す、この方は一切偉そうにする素振りとは遠い存在の方で、パン職人のトップに立っていたことを口にすることもなく、その才能を人々のために惜しみなく奉仕する、色々と深く考えさせられました。
 大学病院はある日を境に、患者からの礼物は一切禁止することが規則となりました。ある年輩の方が温泉帰りの土産を渡してくれ、お断りしたところ、失望した目つきで二度と受診に来なくなりました。これを現代ではコンプライアンスと称し、いいことだとされているが、どうでしょうね。
 デジタルで失ったアナログがある、私のクリニックは最先端のデジタル機器を沢山導入していますが、患者とはアナログで接することにしています。患者は手作りの料理や旅行帰りの土産を持って来て下さることがあり、仕事後は必ずスタッフ全員でシェアしながら、温まった気持ちをまた仕事にお返ししています。院長は能がないからいつも最大のホスピタリティで患者に接したい、受診する場所ではなく、遊びに来たよ、の気軽な空気を保つ場所でありたい、それがうちのコンプライアンスでありたい。


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